つい先日、登り坂になった丁字路を運転していたら、縦棒側がすれ違えない程度の道で、かつ、夜間ゆえライトでこちらにも気付いているはずなのに、堂々と突っ込んで左折してきた車があった。
最終的に、相手車が後退するなどして、無事に通過できたが、そこで出てくるのが標記の原則である。
確かに、自動車教習所の学科でそう習いはしたし、私自身、マニュアル車で運転免許を取ったので、坂道発進を前提にすれば、当然だろうとも思う。
しかし、例えば、交通整理がされておらず、幅員が同じ十字路の交差点では、左側の道路から進行してくる車両が優先(道路交通法(昭和35年法律第105号)36条1項)というように、法定されたものかというと、そうでもないようである。
(交差点における他の車両等との関係等)
第三十六条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。
一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車
二 路面電車である場合 交差道路を左方から進行してくる路面電車
「坂」道については、「追越しを禁止する場所」(同法30条)「徐行すべき場所」(42条)「停車及び駐車を禁止する場所」(44条)などとして、『(上り)坂の頂上付近又は勾配の急な(下り)坂』(引用は同法30条1号)が言及されているが、優先(相手車の進行妨害禁止)の定めは何らされていない。
では、何も根拠がないかといえば、そういう訳でもなく、同法108条の28第3項に基づいて国家公安委員会が作成・公表している「交通の方法に関する教則(昭和53年10月30日国家公安委員会告示第3号)」で言及がされている。※引用元は、令和5年3月17日最終改正分。
第6章 危険な場所などでの運転
第2節 坂道・カーブ
1 坂道・山道
(6) 坂道では、上り坂での発進がむずかしいため、下りの車が、上りの車に道を譲りましよう。しかし、近くに待避所があるときは、上りの車でも、その待避所に入つて待ちましよう。
この教則は、次の引用のとおり、法定の交通ルール(同法108条の28第4項1号)に加えて、交通マナーに相当する事項(同項2号※引用赤文字部分)も含まれているので、上記を踏まえれば、標記の原則はおそらく後者のものだと思われる。
(交通安全教育指針及び交通の方法に関する教則の作成)
第百八条の二十八
4 国家公安委員会は、道路を通行する者が適正な交通の方法を容易に理解することができるようにするため、次に掲げる事項を内容とする教則を作成し、これを公表するものとする。
一 法令で定める道路の交通の方法
二 道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は道路の交通に起因する障害を防止するため、道路を通行する者が励行することが望ましい事項
三 前二号に掲げるもののほか、自動車の構造その他自動車及び原動機付自転車の運転に必要な知識
とは言え、いわゆる「常識」とか「マナー」のようなフワッとしたものではなく、教習内容として多くの運転者の共通認識となっている以上、“交通マナー”の類だとしても、係る原則は、日頃の運転に際して念頭においておくに、越したことはない。
とりわけ、この手の内容は、実際交通事故が発生した場合、過失割合として考慮されることもあり、軽視しない方が賢明であろう。
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